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松尾先生と考える これからの住宅のあるべき姿 第4弾「松尾設計室×ノーブルホーム」後編

ノーブルホーム性能ラボのメンバーが兵庫県の松尾設計室を訪問し、高性能住宅の権威である松尾和也氏とこれからの住まいのあり方について語った今回の企画。前編では、断熱・気密・パッシブ設計などを取り入れた高性能住宅の特徴と、ノーブルホームの新たな取り組みについてお伝えしました。後編では、そうした性能向上が実際の暮らしにどのような価値をもたらすのか、医療費や介護費の削減効果から資産価値までデータを交えながらお話を伺います。

 

目次

松尾和也_ノーブルホーム

 

データが示す高性能住宅の健康への効果

 

前編では、高性能住宅の特徴やメリットをお伝えしてきました。では実際に断熱・気密・パッシブ設計にこだわって建てた高性能の住まいで暮らすと、どのような健康への影響があるのでしょうか。松尾先生より、いくつかのデータをご紹介いただきました。

 

子どもの疾病率が36%少ない

断熱性能の向上により、室内の結露やカビの発生が抑えられ、アレルギー疾患の発症リスクが低下。また、温度変化による体への負担が減ることや、良質な睡眠による免疫力の向上で、風邪などの感染症にかかりにくくなるそうです。実際に断熱が十分な家と不十分な家を比べると、お子様の疾病率が36%異なるというデータも報告されています。

 

要介護期間が平均2.9年短縮

そして注目したいのが、断熱性能が高い住宅では要介護期間が短縮され、健康寿命が伸びること。慶應義塾大学の伊香賀教授の研究結果によると、断熱性能の高い住宅では高齢者の要介護期間が平均2.9年短縮されたそうです。

 

省エネを超えた価値「NEB(ノンエナジー・ベネフィット)」

 

従来、住宅の断熱・気密を向上させる目的として主に語られてきたのは、冷暖房エネルギーの削減による「EB(エナジー・ベネフィット)」。

エネルギーの削減によってもたらされる利益のことで、住宅の断熱性能を上げることで光熱費が節約できるという経済的メリットなどを指します。

 

松尾先生「年間7万円の光熱費が削減できれば、30年住むだけで210万円の節約効果が得られます。住宅の性能向上に一定の初期費用をかけたとしても、光熱費で回収できるわけです。ここについては聞いたことがある方も多いと思います」

これに加えて、今からの時代に知っておきたいのが「NEB(ノンエナジー・ベネフィット)」という考え方。医療費や介護費をはじめとする、さまざまなエネルギー以外のメリットです。

 

上野「先ほどの“住宅の性能を上げると健康に大きなメリットがある”というのも、NEBの一つです。また、風邪をひかなくなって医療費が削減できる、睡眠の質が上がることで仕事がはかどるなど、健康に付随する効果も大きいと思います。家にストーブや扇風機がいらないので、その分の収納スペースも削減できます」

 

松尾先生「超高齢化社会を迎える中、介護費の削減も見逃せません。先ほど高性能住宅に住むと、介護期間が約3年短くなるというデータをお見せしました。介護施設に入るのに毎月10万円かかるとすれば、3年間で360万円、夫婦2人で720万円もの費用が削減できることになります。介護施設の不足でなかなか入居できない問題もありますので、3年も長く家で健康に過ごしてもらえるのであれば助かる方も多いはずです」

暖冷房エネルギーシュミレーション結果

 

これからの日本の住まいと資産価値

 

そして住宅の性能は、資産価値とも密接に結びついています。これまで日本では「新築から30年程度で建物の資産価値はゼロになる」という考え方がされており、中古物件は土地のみの価格で売買されることも少なくありませんでした。しかし、最近では欧米と同様に、性能の良い家は長期的な資産としての価値が期待できる時代になりつつあります。

 

松尾先生「実は日本の住宅価値低下は、建物の劣化状態とは無関係の税法上のルール(木造住宅の減価償却期間22年)に基づく不動産業界の慣習によるものです。最近では、超高断熱の中古住宅を探して購入する方も増えてきており、性能による価値評価の兆しが見え始めています」

 

2025年4月からは断熱性能の基準が義務化され、その後も段階的な引き上げが予定されています。これにより、断熱性能の低い住宅の価値は相対的に下がっていくことも予想されます。

 

上野「私たちは法改正を先取りする形で、断熱等級5を最低基準、注文住宅は等級6を標準化しています。将来を見据えた性能確保が、資産価値を守ることにつながるのです」

 

松尾先生「環境省の予測では、2100年には札幌でも夏季の気温が41度に達すると言われています。これからの住宅には、そういった気温上昇にも対応できる性能が必要です」

ノーブルホーム_要介護認定年齢

家族の幸せな暮らしのための住まいづくり

 

「地球環境に優しい」「SDGsに貢献する」という言葉をよく耳にしますが、実際の住まい選びではもっと身近な視点が大切です。

 

松尾先生「今30歳の方が平均寿命まで生きれば、50年近く住むことになります。その期間のトータルコストが最も安くなるレベルは、最低限確保すべきでしょう。建築費、光熱費、メンテナンス費用など、すべてを考慮した上で自分と家族の幸せを最適化していけば、結果として資産価値も保たれ、地球環境にも優しい住まいになる。私はその順番でいいと考えています」

 

ノーブルホームでは、これからの時代に求められる性能を備えた住まいを、より多くの方に体感していただくため、2025年初夏、水戸市に松尾氏の知見を活かした新たなモデルハウスをオープンする予定です。暮らしの快適さと、健康で持続可能な住まいの在り方を、実際に体験してみてはいかがでしょうか。

 

松尾設計室×ノーブルホームの家